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はなむぐり
第4章 誘う香り
私の順番になり、振り返れば列は私で途切れたようだ。嬉しいのか困るのか。複雑だ。
「お待たせしました。いらっしゃいませ…あっ」
カゴから私に目を向けた蜜樹の頰はほんのり赤くなり、辺りをキョロキョロ見回してから品物を通し始めた。
「いつから働いている?」
「一週間くらい前から」
「教えてくれたらよかったのに」
「恥ずかしいもん…はい。756円です」
少しばかり素っ気ない返事に胸が痛み、そもそも私が悪いのだから仕方がない。
お金を払い、話しかけようとしたらお客さんが来てしまったので離れた。
品物を袋に入れ、蜜樹の遠くなりつつある声を聞きながら店を出た。