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はなむぐり
第5章 はなむぐりと花
蜜樹の誕生は私の人生を大きく動かした。
私は悪い意味で蜜樹の人生を左右していないか。
突き放すことは決してしないが、身を引くことは常に頭に置いておかねばならない。
考え込む私の唇を、蜜樹は優しく包んだ。
触れるだけの口づけをしたあと、至近距離で口を開いた。
「おじさんにずっと謝りたかった。ずっと好きで仕方がなかった。あそこのスーパーで働くことを決めたのも、おじさんがよくあそこで買い物してるってばあちゃんに聞いたから。だから来てくれたとき…恥ずかしかったけど嬉しかった」
私の腕の中で体勢を変えながら話し、首に両腕を回して両目を輝かせる。
「私、もう進路決まってるの」
「何か夢があるのかい?」
内心、遠くに行くのではとひやっとしたが深呼吸してから聞いた。
「あそこのスーパーでずっと働いて、卒業してもあそこで働くの。それで、いつかここに住む。おじさんの家賃も半分になるし惣菜ばかりのご飯から卒業させてあげるの。もう決まってるの」