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はなむぐり
第7章 恋いこがれる、はなむぐり
積もった雪の反射で眩しく、路面は凍ってはいないがじきに凍結するだろう。
外は頰がつねられたのかと勘違いするほどの寒さ。
慎重に運転する私の隣で、蜜樹は鼻歌を歌っていた。
私が幼い頃、夏休み冬休みといえば家族全員でよく行った小さな旅館。
いつかそこに蜜樹もと考えていた矢先に兄が亡くなり、それから両親は思い出してしまうからと旅館の話もしなくなった。
本当は全員で来たかったが、蜜樹と私で楽しんできてと両親に言われた。
一泊二日の短い時間だが、少し遅れた高校の入学祝いとして蜜樹を誘うと大喜びしてくれた。
町からだいたい40分程度で着き、有名な名所はないが美しい山と湖が部屋にある露天風呂から見える。
料理は…記憶に乏しいが食べきれなくて兄に手伝ってもらったことははっきりと。
「おじさんと逃避行だ」
蜜樹はぽつりと呟いた。
「馬鹿なことを言うんじゃない。何も悪いことはしていない」
厳しく言った直後に後悔した。
「嬉しい。悪くないもんね。おじさんと蜜樹はお互いだけだから、胸張っていいもんね」
すぐに返ってきた言葉に、私は頷くしかなかった。
禁断とか、気味が悪いと思われてしまうこの気持ち。
静かになった車内で、蜜樹の気持ちばかり考えていた。