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はなむぐり
第1章 愛しい花


「蜜樹の帰る場所は私だ。蜜樹を愛してる。人として女性として。中途半端に蜜樹と向き合ったことはない。愛してる。ずっと前から」

お腹をずっと握りしめている蜜樹の小さな両手を片手で握り、お弁当箱を足元に置いた。

「可愛い顔を見せてくれ」

そう言うとすぐに目の前に蜜樹が現れ、爪のあとがついたであろう私のお腹を優しく撫で始めた。

「ずっとよ。飽きることなんてない。お父さんもじいちゃんばあちゃんも一緒にいることをきっと許してくれてる。私の大切な人はおじさんだけ」

目を瞑って長いまつげを震わせて言う蜜樹を力いっぱい抱きしめた。このまま抱き潰してしまおうか。

「…帰ったらたくさん繋がろう。ずっと中にいさせてほしい」

「うん。後輩さんに誘われても今日はダメ…夜だけ私のおじさん」

お互いの熱をできるだけ感じ取ったあと、私は重たいお弁当箱を手に役所へ向かう。毎朝いつも離れがたくなるので、その分の時間を考えて起きている。

「いってらっしゃい」

「いってくるよ」

人目を気にしながら素早く口づけを交わし、階段を下りて振り向けば古い2階建てのアパートに似つかわしくない美しい人が手を振る。

「また綺麗になったなぁ」

そう口が動いたのが分かったのか、耳に手を当てて首を傾げている。

私は首を横に振り、手を小さく振ってあたたかい風を感じながら足を速めた。

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