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はなむぐり
第9章 はなむぐり
部屋以外で、こんなに落ち着いて二人の時間を過ごせたことにこの上ない幸せを目いっぱい感じていた。料理はもちろんおいしかったが、蜜樹の食べている姿は永遠に見ていられる。蜜樹を抱いたあの日から一年が過ぎ、私は2月で57歳、蜜樹は3月で27歳になった。お互いの誕生日は私の両親とともに過ごしたが、二人きりの時間も用意したいと前から考えていた。
それがなかなかできなかったのは、人目を気にしていたから。そんな中で、蜜樹から家族に変わりないからという言葉に励まされ、今日、夢が叶った。
食後のティラミスが運ばれ、金色の小さいスプーンで幸せいっぱいの顔で味わう蜜樹は可愛くて食べてしまいたいほど。
私は先に食べ終え、朱色のネクタイとシルバーのネクタイピンを見つめてから蜜樹に目を移して食べ終わるのを待っていた。
綺麗に食べ終えて両手を合わせたところで、鞄からプレゼントを出して蜜樹の目の前に置いた。
「これ、なあに?」
手のひらに収まるほどの白い箱。銀色のリボンがかけられている。蜜樹は私と箱を交互に見ながら問いかけてくるが、私は焦る気持ちを抑えて開けるように促す。
私をじっと見つめながら慎重に箱を手に取って、リボンをほどいて開けた。