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はなむぐり
第9章 はなむぐり



気持ちが落ち着いてから丁寧にタオルハンカチを畳んで返そうとしたがその手を握り、そっと押した。すると、嬉しそうに頷いてバッグにしまった。

目が合うだけでお互いに照れて笑っているところで、料理が運ばれてきた。二人の女性の店員さんが焼きたてのマルゲリータとトマトとイカのパスタをテーブルに置き、デザートは後でお持ちしますとにこやかに去っていった。

「すごく良い香りがする。こんなご飯初めて」

蜜樹はいつも輝いている両目をより輝かせ、両手を合わせてから私が食べるまで待ってくれている。

「遠慮しないで食べなさい。食べる姿を見せてほしい」

今日の私はおかしいのか。
私の言葉に蜜樹は両手で顔を覆い、吐息を漏らしてからピザを取り皿にとった。

「手で食べていいの?」

「好きに食べて大丈夫だよ」

緊張した面持ちで湯気が上がっているピザを一口食べて、伸びるチーズに困りながらもおいしそうに食べている。

「おいしいっ…こんなにおいしいの初めてだよ。智さん、ありがとう」

屈託のない笑みに胸が熱くなり、言葉が出てこなくて頷いた。
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