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もしも勇者がラスボスと子作りをしてしまったら。
第2章 僕は勇者です。
リーマンショックを皮切りに世界を襲った不況は、ワールドクラスのみならず、冴えない男の懐事情も直撃した。

年を追うごとに仕事の過酷さは増えていくものの、ボーナスと給料は下がりっぱなし。

さらには係長という身でありながら、本来であれば部長クラスの人間が解決すべきお客様からのクレームを対応する始末。

心身ともに痩せ細りながらも、それでも僕は持ち前の真面目さと粘り強さでキッチンペーパーを販売し続けていた。

どれだけ辛くても頑張ることができたのは、愛する妻がいてくれたのはもちろんのこと、夢があったからだ。

いつか自分の子供がほしい、という夢が。

大家族になることはできないけれど、せめて一人でも、この手で自分の子供を抱いてみたいという憧れがあった。

来たるべきそんな日に備えて僕は、少ない給料とお小遣いの中からでも、将来必要になるであろう育児費や教育費をこつこつと貯金していった。

そんなある日、いつものように激務に耐えて夜遅く家に帰れば、愛する妻から差し出されたのは、お疲れの一杯ではなく、お別れの一通。

……離婚届だった。

自分と同じように子供を欲しがっていた妻だったが、あまりに貧弱過ぎる僕の給料に危機感を覚え、いつの間にか他の男性を見つけていたらしい。

有無を言わぬ威圧的な態度で、妻は僕の手にハンコを握らせると、今まで共に過ごしてきた繋がりを目の前で断ち切った。

頭が真っ白になった。

何も考えられなかった。

何も感じなかった。

人生、何が起こるかわからない。

なんて言葉は耳にタコができるほど聞いてきたけど、まさかこんな形で自分の身に起こるなんて、夢にも思わなかった。
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