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裏切りの幼なじみ
第5章 麗しき囚虜

      *     *     *

詰め込まれていた猿轡を美由紀の口から取り出してやる。べっとりと唾液で湿った布が糸を引き、美貌の下唇から顎先にトロりと垂れた。

それだけで、隆志の股間は熱を帯び、溜飲が下がる。

(いくらクールに澄ましていても、口の中が粘ついた生身の女じゃないか)

目と口の拘束を解かれた美由紀は、完璧な美女。おそらく不意を突かれて男たちに拘束され、拉致監禁の被害者としてこの場にいるはず。

しかしながら、圧倒的な美オーラを放つ美由紀を前にすると、手を伸ばして触れることさえ躊躇してしまう。

隆志の肩に手が触れた。葉子の温かい手だ。

「まずはふたりで上半身から脱がせていきましょ。ドアは施錠しているから、逃げられやしないわ」

上着を脱がせるには手錠を解く必要がある。プラスチック製とはいえ十分機能を果たしているそれを葉子が外し、形だけ自由になった美由紀を見下ろす。女どうしの視線が火花を散らす。

「さぁ、両腕を上げて。バンザイの姿勢よ」

葉子の冷たい命令口調が響く。美由紀は曲げた両ひざを横に流したお姉さん座りの姿勢で右手をベッドに、左手を腿の上に置いたまま動かない。

「いまの自分の状況を分かってる? もう一度だけ言うわ。バンザイをするの。無理ならワイヤーで吊ってあげましょうか」

表情を変えぬまま、美由紀はパンプスを脱いで下に揃え、背筋を伸ばし、ベッドに正座をした。そして、ゆっくりと両腕を上げ、手のひらを前に向け、頭上に高く掲げた。

「あはははっ。見て、隆志さん。降伏のポーズよ。銃を向けてもいないのに、滑稽ね」

嘲笑する葉子を気にもせず、美由紀は姿勢良く両腕を高く挙げ、前を見据えている。

隆志は立ち尽くしたまま見ていた。笑えなかった。同時に、彼女たちのやり取りに女の冷酷さ、女の底意地を感じて震えた。

母性愛に満ちた、優しい巨乳の先輩。その裏の顔、女の腹黒さなど、見たくなかった。

(彼女たちの間に何があったのかは知らないが……俺は美由紀の側に付く)

矛盾した想いが交錯する。隆志は美由紀に駆け寄り、ジャケットを静かにたくし上げ、バンザイの両腕を通過させた。

「そうそう。服を脱がせるために腕を上げてもらっただけよ」

皮肉を込めて葉子がオチをつける。
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