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裏切りの幼なじみ
第7章 哀しき未亡人
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唇を閉じたまま口角を上げた美貌には、うっすらとほうれい線が浮かぶ。頬のえくぼは少女のようで、そのギャップが悩ましい。
(もう女なんか面倒だって思ってたけど、こんな女性なら……)
気恥ずかしくて、奈津子の背後に見える小型冷蔵庫やこじんまりしたキッチンを眺める。気が遠くなり、フワリと景色が反転した。
「――大丈夫? しっかりして! 頭ぶつけなかった?」
「ぁ……だいじょうぶ、です。すみません、急にふらついて」
いつの間にか椅子からフロアに転げ落ちていた。慌てて自分で立とうとしたが、身体が重く、いうことをきかない。
「疲れているのね。ベッドまで歩ける? ほら私の肩につかまって」
奈津子の柔らかな肩に体重を預けてベッドのある奥の部屋へ案内される。ふらふらと歩きながら、彼女の首元から漂う熟した芳香と髪の匂いに酔いしれる。
「ちょっと待っていなさい。お薬を持ってきてあげるから。動いちゃだめよ!」
ベッドの上で大きめのまくらに頭を預けながら、奈津子の戻りを待つ。彼女のキツめの口調から底深い母性を感じる。
天井の蛍光灯は古く、端が黒くなって微妙に震えながら光っている。
(この場所、いつ頃からあるんだろう……)
築三十年くらい経っていそうな物件だ。
ふと、幼少時代の記憶が浮かぶ。もう十年くらい昔の夏の出来事だ。
学校が休みのある日、美由紀と遊んでいる途中で突然具合が悪くなった。めまいと吐き気、そして腹痛。時々起こる症状なのだが、隆志の青い顔を見た美由紀は驚いて彼の手を握った。
『一緒に行って診てもらいましょ。こんな時こそ大人を利用しなきゃ……ね』
行き先は病院ではなく、いつもの待ち合わせ場所だった。マンションの一室には、大人の女性と数人の子どもがいた。中に入るのは初めてだった。
『顔が真っ青よ。ベッドがあるからいらっしゃい』
少年の顔色を見て驚いた様子の女性は、優しく介抱しながらベッドに導いてくれた。
『暑くてもおなかは冷やしちゃだめなのよ』
掛け布団をいやがる隆志を優しく諭し、汗ばんだ顔を団扇で煽いでくれる。彼女の優しい香りが団扇の風に運ばれてくる。
心配そうにのぞき込む女性の顔は、とても美しく柔和で、神秘的だった。
(もう女なんか面倒だって思ってたけど、こんな女性なら……)
気恥ずかしくて、奈津子の背後に見える小型冷蔵庫やこじんまりしたキッチンを眺める。気が遠くなり、フワリと景色が反転した。
「――大丈夫? しっかりして! 頭ぶつけなかった?」
「ぁ……だいじょうぶ、です。すみません、急にふらついて」
いつの間にか椅子からフロアに転げ落ちていた。慌てて自分で立とうとしたが、身体が重く、いうことをきかない。
「疲れているのね。ベッドまで歩ける? ほら私の肩につかまって」
奈津子の柔らかな肩に体重を預けてベッドのある奥の部屋へ案内される。ふらふらと歩きながら、彼女の首元から漂う熟した芳香と髪の匂いに酔いしれる。
「ちょっと待っていなさい。お薬を持ってきてあげるから。動いちゃだめよ!」
ベッドの上で大きめのまくらに頭を預けながら、奈津子の戻りを待つ。彼女のキツめの口調から底深い母性を感じる。
天井の蛍光灯は古く、端が黒くなって微妙に震えながら光っている。
(この場所、いつ頃からあるんだろう……)
築三十年くらい経っていそうな物件だ。
ふと、幼少時代の記憶が浮かぶ。もう十年くらい昔の夏の出来事だ。
学校が休みのある日、美由紀と遊んでいる途中で突然具合が悪くなった。めまいと吐き気、そして腹痛。時々起こる症状なのだが、隆志の青い顔を見た美由紀は驚いて彼の手を握った。
『一緒に行って診てもらいましょ。こんな時こそ大人を利用しなきゃ……ね』
行き先は病院ではなく、いつもの待ち合わせ場所だった。マンションの一室には、大人の女性と数人の子どもがいた。中に入るのは初めてだった。
『顔が真っ青よ。ベッドがあるからいらっしゃい』
少年の顔色を見て驚いた様子の女性は、優しく介抱しながらベッドに導いてくれた。
『暑くてもおなかは冷やしちゃだめなのよ』
掛け布団をいやがる隆志を優しく諭し、汗ばんだ顔を団扇で煽いでくれる。彼女の優しい香りが団扇の風に運ばれてくる。
心配そうにのぞき込む女性の顔は、とても美しく柔和で、神秘的だった。
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