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裏切りの幼なじみ
第7章 哀しき未亡人
まだ性に目覚める前の甘い体験は、あくまでエロスではなく安らぎの記憶として隆志の肌、網膜、嗅覚に刻まれていた。

夢の続きをみているような心地だった。

「もう少し温めるべきね」

再度コップに美唇をつけ、口内に含んだ薬水を、しばらく、クチュクチュ、と舌で転がす。

癒しの美貌が近づき、口づけ。奈津子の舌が隆志の唇を、つん、とノックする。緊張を緩めて唇を開くと、とろみがかった人肌温の薬水が再び、ぬるるんと注がれる。

(このとろみとヌメりと温かさは、ぜんぶ奈津子さんの唾のせいだ……)

凄い量の女唾を飲まされている。しかも甘蜜が滴るほどに熟した未亡人の口内から紡がれた、糸引くほどに濃厚な唾だ。

「どう? お口でかなり温めたけれど……」

「ヌルヌルした喉越しがすごく、エロティックっていうか……甘いです」

もしかしたら奈津子も性的興奮のせいで口内粘度が高まっているのかもしれない。

「あら、この煎じ薬は大人が飲んでもかなり苦いものよ。味覚が麻痺するほどに疲れているのね。かわいそうに……クチュクチュ……」

(あぁ、バレちゃうよ。勃ってるのが)

何度もとろみの口移しを流し込まれる。

奈津子の息遣いが徐々に荒く、熱くなっていくのが分かる。熟した舌が隆志の口内に忍び込み、若舌を舐めまわす。

「ねろぉっ……ちゅぴ……どう? わたしの舌の味は……」

「甘いです。薬は苦いけど、奈津子さんの唾と体温で甘くなるんです」

「ぅふ……良かったわ。じゃ、最後の一口ね」

広めに開いたブラウスの襟元は、奈津子の首筋やデコルテを優美に演出している。

口移しの間は唇から、顔を離すと胸元から、哀切の女香が漏れる。

「熱はなさそうね」

おでこを隆志に密着させながら、奈津子は腹部に手を当ててくる。

「ごめんね隆志くん。おばさん、冷え症だから手が冷たいかも」

「大丈夫ですよ。それに、奈津子さんはおばさんなんかじゃない」

まるで冬の仕草みたいに息で両手を温め直し、その両手を擦り合わせる。仕草の一つひとつが母性的で、おばさんでもなければ、おねえさんでもない。適切な表現を探すなら、聖母だろう。

「気を使わなくていいわよ。でも、ホッとしたわ。元気になってくれたみたいで……」
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