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裏切りの幼なじみ
第8章 柔肌調教
幼かった隆志は、ベッドで目を覚ますと、下半身に違和感を覚えトイレを借りた。ペニスの赤い付着に首をかしげながら用を足し、それから美由紀の姿を探した。ここに連れてきてくれた彼女にお礼の一つも言いたかったのだ。

広いリビングでは、あの優しい保母さんが複数の児童たちと歌を楽しんでいる。そこに美由紀の姿はない。

もう一度ベッドの部屋へ戻ろうとして、その奥にひっそりとした扉を見つけた。そぉっと開けてみる。中は一般家庭の女の子の部屋みたいだった。

ベッドがあり、そこに美由紀が寝ていた……。

(そう、ここだ。あの日、このドアの向こうに、美由紀がいたんだ……)

十年の時を隔てた扉をそっと開く。あの時と同じ位置にベッドがあるが、誰もいない。寂しさにホッとする。いけないとは思いつつ、足を踏み入れる。

(甘い匂いがする。オンナの匂いだ……)

フロアには、おしゃれな丸テーブルとラグマット。見渡せばパープル系のカーテンが上品さを演出し、整えられた本棚の隅に小物類が置かれている。 

(割と几帳面だな。独り寂しい未亡人がここで夜な夜なオナニーしていたのかも……まぁ、今後はその必要もないな)

奈津子は火を止めてすぐ来るだろう。部屋を出ようとして、棚の写真立てに目が止まる。

「家族写真か?」

本棚の隅に飾られた写真に目を凝らし、絶句した。

「み、美由紀が……奈津子と一緒に……」

フォトフレームの中で、幼い頃の美由紀と若き奈津子が寄り添いながら微笑み、切り取られた時の世界から隆志を見つめていた。

      *     *     *

「隆志くんは先に食べていて……お腹すいているでしょ」

先にお風呂に入ると隆志に告げ、奈津子はリビングを出ていく。

ぽつんと残された隆志の前には風味豊かな肉じゃがとサラダ、黄身がこんもりした半熟の目玉焼きに味噌汁というご馳走が並ぶ。

ご飯は炊飯器から自由によそって食べるように言われたが、どうも気が進まない。

(一緒に食べましょ、なんて言ってたくせに……やっぱり気を悪くしたのかな)

写真立ての二人に見入っているところを、奈津子に見つかった。怒りとも悲しみともつかない深遠な瞳で『なにをしているの』と低く諭された。寝室に勝手に入ったことを詫びたが、奈津子は何も言わず背を向けてリビングへ戻り、隆志の夕飯の支度を始めたのだ。
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