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蘇州の夜啼鳥
第2章 かりそめの恋
あんなに晴れていたのに、午後になると密やかな雨音が小さな宿を包み始めた。
…宿を出る前に、暁蕾に声をかけようとしたが姿が見当たらない。
「…シャオレイ?どこにいる?」
部屋や廊下を探して、たどり着いたのはバルコニーの突き当たり奥…。
…まだ中国服のまま、低い柵に腰掛けてぼんやりと小さな運河の水面を眺めていた。
「…シャオレイ…」
声をかけながら、ゆっくりと近づく。
振り返る暁蕾の美しい瞳が哀しげに潤んでいた。
「どうした?まだ具合いが悪いのか?」
心配になり尋ねると、暁蕾が首を振る。
綺麗に編んだ艶やかな黒髪のお下げ髪が揺れる。
「…帰りたくない…」
片岡は眉を顰める。
「…シャオレイ…?」
「…帰ったら…私と貴方はただのガイドと依頼主になってしまうわ…」
「…シャオレイ…」
その言葉の真意に気づき、息を呑む。
暁蕾はするりと柵から降りると小さく叫んだ。
「…まだ、戻りたくないの…!」
「シャオレ…」
突然、不意打ちのように片岡の胸にほっそりと華奢な身体が飛び込んできた。
強くしがみつかれ、必死に告げられる。
「…好きなの…!貴方が好き…!」
「…シャオレイ…!」
…甘い花の薫り…。
強く抱けば砕けそうにか細い身体…。
小刻みに震えるその儚げな背中…。
片岡は、眼を閉じた。
…宿を出る前に、暁蕾に声をかけようとしたが姿が見当たらない。
「…シャオレイ?どこにいる?」
部屋や廊下を探して、たどり着いたのはバルコニーの突き当たり奥…。
…まだ中国服のまま、低い柵に腰掛けてぼんやりと小さな運河の水面を眺めていた。
「…シャオレイ…」
声をかけながら、ゆっくりと近づく。
振り返る暁蕾の美しい瞳が哀しげに潤んでいた。
「どうした?まだ具合いが悪いのか?」
心配になり尋ねると、暁蕾が首を振る。
綺麗に編んだ艶やかな黒髪のお下げ髪が揺れる。
「…帰りたくない…」
片岡は眉を顰める。
「…シャオレイ…?」
「…帰ったら…私と貴方はただのガイドと依頼主になってしまうわ…」
「…シャオレイ…」
その言葉の真意に気づき、息を呑む。
暁蕾はするりと柵から降りると小さく叫んだ。
「…まだ、戻りたくないの…!」
「シャオレ…」
突然、不意打ちのように片岡の胸にほっそりと華奢な身体が飛び込んできた。
強くしがみつかれ、必死に告げられる。
「…好きなの…!貴方が好き…!」
「…シャオレイ…!」
…甘い花の薫り…。
強く抱けば砕けそうにか細い身体…。
小刻みに震えるその儚げな背中…。
片岡は、眼を閉じた。