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愛することで私たちは罪を犯す
第1章 1. 悲劇の序章

ハイブランドのスリーピーススーツを美しく着こなし、凛とした姿で堂々と歩く響に、目を奪われない者はいない。

挨拶をしながら会社へと入っていった響は、たくさんの熱い視線(特に女性から)を浴びながら20階の自室へといくためのエレベーターを待つ。

(こんなのが毎日続くなんて、大変よね…)

後ろからその様子を見ていた琉泉は、そんな周りの様子を見ながら考えていたとき。

「大変だな」

「!!」

心の中の声とシンクロしたように感じて、反射的に後ろを振り返る。

そこにいたのは、同じ警備部のボディーガードでついでに同期の一ノ瀬 蓮だった。

インカムなどをつけていないことから、一ノ瀬もこれから出勤するところなのだろう。

「イケメンで才色兼備な副社長も、その人に付きっ切りのお前も」

「ビックリした…驚かさないでよ!」

「後ろから声かけただけじゃん。佐伯こそ、振り向いたときの殺気、めちゃくちゃ怖かったからな」

ジャニーズ系の爽やかフェイスを少し歪ませながら、琉泉を見下ろす。

それにしても。

(殺気って……)

まぁ確かに、話しかけられた直後は心を読まれたかもしれないという焦りと驚きで、つい身構えてしまったかもしれない。

だが、これについては琉泉だって言い分はある。

一ノ瀬は出勤前かもしれないが、琉泉の場合は出勤も退勤もない。

家にいようが会社にいようが、響を警護している最中は全て仕事だ。

仕事中に「おはよう」もなく、急に人の心を読むように後ろから話しかけないでほしい。


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