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愛することで私たちは罪を犯す
第1章 1. 悲劇の序章
「はっ…はぁっ…」
寒くて寒くて、暗い夜。
ただ必死に、足を動かして逃げる夜。
「どこだっ!?あのガキ…」
「さっさと探しだして取っ捕まえな!あいつがいなきゃ金ももらえないんだ!!」
こわいおとなの声がすぐ近くから聞こえる。
いやだ。いやだ。いやだ。
もう、あんな場所に戻りたくないーー。
「いたっ!!あそこだ!!」
「!?」
こわい目をしたおとなと目があって、すぐに反対の方向へ走り出す。
しばらく走ると夜は一気に明るくなり、キラキラと光る店の多い場所に出た。
道には人がたくさんいる。
派手な化粧をしたドレスのおねえさん。
赤い顔のおじさん。
エプロンを腰に巻いて大きな声を出すおにいさん。
その人たちの間を通って、走る。
「くそッ、待ちやがれ!!」
後ろの方から怒鳴り声が聞こえたけど、私はひたすらに走り続ける。
足を止めたのは、隠れられそうな細い路地に入ったときだった。
「はぁっはぁっ……」
しゃがんで、身を小さくする。
捕まりたくない。
怖い。
いやだ。
いやだ。
いや……