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愛することで私たちは罪を犯す
第1章 1. 悲劇の序章

公民館の中の一室。

救護室として使われるこの部屋は、あの独特の消毒液の匂いが充満していた。

響は、担いでいた琉泉をベッドに座らせ、自分はキャスター付きの椅子を移動させてきて正面に座る。

「ほら、足出せ」

「いえ、自分でできますから…」

「いいから。あと、今は敬語じゃなくていい。二人きりだろ?」

琉泉と響は主従関係だ。

だから、本来ならば琉泉が響に対して敬語を使うのは当たり前だし、会社ではそうしている。

だが、響は琉泉に敬語を使われるのが好きではないらしい。

小さい頃から一緒に育ったこともあり、兄妹のように思っているからだろう。

(私はそんな風に思った事、ないんだけどね…)

琉泉がそんなことを考えている間に、響はスーツパンツが破れ血が滲んだ足を持ち上げる。

「んっ……」

「っと、悪い。痛かったか?」

「ううん、大丈夫」

本気で心配している響の顔を見て、なんだかいたたまれない気持ちになる。

本当に痛かったわけではなく、自分の足に触れた響の指の感覚に驚いただけなのだ。

(変な声…出ちゃった…)

響はパンプスを脱がせて自分の腿の上に、琉泉の脚を置く。


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