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愛することで私たちは罪を犯す
第1章 1. 悲劇の序章

「ごめんな、琉泉」
同じ高さから伸ばされた大きな手で優しく頭を撫でられ、その手はやがて琉泉の頬に触れる。
温かくて、優しい手。
上を見上げると、悲しげに揺れる瞳と目が合う。
時間が、とまる。
至近距離で恥ずかしいはずなのに、目を逸らさない。
胸が、締め付けられたように苦しい。
考える前に、身体が動いていた。
気づいたら、立ち上がり、自分の胸の中に響を抱きしめていた。
シトラスのコロンが、鼻をかすめる。
(違う…)
謝って欲しいわけじゃない。
(そんな権利、わたしにはない…)
だって、謝らなければいけないのは……
(私の方だから)

