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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界
…………………………
ガシャンッ…
YAGAMIホールディングス、18階。
警備課の広いフロアに響いた割れ物の音に、皆が振り返る。
視線を集めていたのは、自分に何がおきたのか分かっておらず、ボーッと割れたコップを見ていた琉泉だった。
「ねぇ…さーちゃん?」
「えっ、あ…」
コピーしたばかりの書類を手にした三嶋に声をかけられ、琉泉はやっと自分を取り戻した。
床にはブラックコーヒーと割れたカップの破片が散らばっている。
「すみません、すぐ片付けます…」
状況を飲み込み、片付けるためにほうきとちりとりを持って来ようとして、今度は足を椅子のキャスターにぶつける。
「ちょっと、大丈夫!?」
「…ボーっとしてて。ごめんなさい」
本気で心配している顔の三嶋に、苦笑いを浮かべながら謝る。
そんな様子を、少し離れたところから他のチームのメンバーは見ていた。
「どう思う?あれ」
「明らかにおかしいな」
「何かあったんすかね?佐伯」
鶴橋、隈川、一ノ瀬が声を潜めてお互いの顔を見合わせる。
ボディーガードとしても優秀で、何事にもきっちり取り組む、隙のない琉泉がこんなことになるのは珍しい。