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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界


拓武は内側の胸ポケットから、一枚の写真を取り出す。

琉泉はそれを見て、言葉を失った。

そこには、明らかに怪しいサングラスをかけたアジア人と、周りを気にするような様子でその人物の隣を歩く、響の姿が映っていた。

「…このサングラスの男が、陣 瞑真だよ。写真はこれだけではない。李月のパソコンには50枚近くの密会の写真が残っていた。どうやら、陣氏とのコネクションを持っていたのは孫の方だったようだがね」

あり得ない。

そんなこと、あり得ないはずだ。

響は曲がった事が嫌いで、裏から物事を進めることは絶対にしなかった。

『俺は、この会社の実質2番目に権力をもつ人間だ。だからこそ、社員の模範的な存在にならなければならないし、正々堂々と戦わなければいけない』

副社長に就任し、ささやかながら二人で祝賀会をしたときのことだ。

オシャレなバーで良い感じに酒が回り、いつもは口下手な響が琉泉に話してくれたことだった。

そして、響はその言葉通り、忠実に努力し、成果を上げてきた。

琉泉はそれを誰よりも近くで見てきた。

それなのに……。

「…あり得ません」

「君がなんと言おうと、この写真が全てを語っているだろう。しかも、一度ではないのだからな。言い逃れはできん」

恐ろしく冷たい声だった。

それはそうだろう。

自分の肉親が殺され、姪を拉致された人間を、その姪自身が庇っているのだから。

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