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愛することで私たちは罪を犯す
第2章 2. 偽りの世界

「それに、李月が殺されたのにはもう一つ理由がある。亡くなった李月のパソコンの中からこんなものを見つけたんだ」
琉泉の前に差し出されたのは、たくさんの情報がまとめられたプリントの束だった。
「これは八神ホールディングスが、裏社会のドンと呼ばれている陣 瞑真(ジン メイシン)と繋がっている証拠だ。八神は以前から裏社会に出入りしているという情報があったが、なかなか尻尾は出さなくてね。この証拠を得るために、李月は八神を嗅ぎまわっていたんだ。それを目障りにでも思ったんだろう。軽々と、奴らは命を奪った」
その言葉に、今まで冷静を保っていた琉泉の心がぐらついた。
「そんなっ!!八神はそんな企業ではないです!!だって…」
(…響が、あんなに努力して、変えてきたのに……)
ずっと、琉泉は近くで見てきた。
先代が残した横暴な経営方針を払拭するために、響は寝る間も惜しんで働いていたところを。
今でさえ家に帰りベッドで寝ているが、数年前までは社内の空き部屋で仮眠をとるほど働きづめだったのだ。
休んでほしいと思っていたが、響が抱えるものの大きさを考えると、琉泉は何も言えなかった。
その甲斐もあって、最近の八神ホールディングスの社内満足度は高く、取引先の印象も良くなってきた。
それなのに、反社会勢力と繋がりがあるなんてことがあれば、響が築いてきたものを、全て失ってしまう可能性がある。
「これが、事実なんだよ」
「…信じられません」
「…これでも、信じられないかな?」

