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さすがに無理やろ
第8章 立ち聞きと待ち伏せ

それから俺達は
『友達』とか『同僚』という感じの
距離を取りながら電車に乗った

目的地は
俺オススメの店で
うどんとおでんが食べられる店や

そこなら
青山さんの好きな日本酒も飲めるし
遅い時間でも
消化のええもん食べられる

それにその店は
青山さんが降りる駅から
歩いて数分の場所

できることなら
帰りに家まで送って行けたらええんやけど

「俺はおでんに熱燗やな。
青山さんもおでん食う?」

「あ、はい。
あ、何がいいですか?
私、取ってきます」

この店のおでんはセルフサービスで
自分で好きなもんを取って来るシステムなんやけど
それを察知した青山さんは
すぐに席を立とうとした

「ええよ、慣れてるから俺が」

「いえ、私が」

「クスッ」

「え?」

「まだ仕事モードなんやなぁ。
そんなテキパキせんでええねんで?
職場やないんやから
眼鏡外してゆっくりしーや。
疲れてるんやし」

「あ…すみません」

青山さんは
少し苦笑いをすると
テーブルに眼鏡を置いて
ふー…と
静かに息を吐いた

「髪は?ほどかへんの?」

「え?」

「楽なんやろ?
ほどいた方が」

「あ…でも髪は
ゴムでクセがついてるので…
おかしいから」

え?!
それって
『恥ずかしい』っていうことやねんな?
俺はそんなこと
全く気にしてないけど
青山さんは
『おかしい』とこを俺に見せるのが嫌っていうことよな?

…すげー嬉しいんですけど!

「ほな
仕事が休みの時は
ほどいておいでな」

「あ…そう…ですね」

「いつにする?」

「え?」

「今日はキャンセルになったからなぁ」

「あ、でも」

分かってんで
キャンセルしてしもうたけど
結局一緒に食事してるやん?って顔や

「明日、予定ある?」

これはこれ
それはそれや

「い、いえ…」

ほな決まりや

「ほな明日な。
さ、おでん取りに行こか?
一緒に」


「はい」

相変わらず
押しに弱い青山さんは
なんとなく
いつの間にか
また俺との約束をしてしまうのだった
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