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恋がしたいと言いながら
第1章 待ちに待った呼び出し
 大通りからひとつ逸れた道を行き、私たちは一軒のダイニングバーに入った。
 地下に向かってひっそり伸びる階段はまさに隠れ家といった感じで、いつもわくわくしてしまう。
 薄暗い照明と静かなBGMで雰囲気たっぷりな店内は、ほとんどがカップルの客で埋まっていた。カウンターに通されて、私たちは身体を寄せ合い、見慣れたメニューに目を通す。
 ここはリーズナブルで何を頼んでも美味しいので、お気に入りの場所なのだ。
「加奈はいつものモヒート?」
「あ、うん」
 いつも飲んでいるカクテルを覚えていてくれる。それだけで愛されているような気分になれる。
 ベストとソムリエエプロンを着けたおしゃれな店員さんに、飲みものと適当なお料理を注文する優也くんを私は惚れ惚れと見つめた。
 優也くんは私より2つ年下の25歳でありながら、こういうところでは私よりもずいぶん堂々としている。そしてそれがよく似合っている。
 もともとの育ちも良いのだと思うけれど、大きな会社に勤めていると気品というか自信というか、そういうものも培われていくのだろうか。
 カチンとグラスを合わせてから、モヒートを喉に流し込む。炭酸の爽やかな刺激がしゅんと染みて気持ちいい。
「ごめんね、いつも急で」
「ううん、大丈夫」
 本当にすまなそうな優也くんに、とびきり可愛く微笑んでみせる。この時間のためだったら、そんなことはぜんぜん嫌じゃない。
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