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恋がしたいと言いながら
第9章 バル
 みんなの言う『出会い』って何だろうと思う。
 男女が知り合うことだというのはわかるけど、それだけならいつでも誰とでもできるはずだ。
 例えばバーや街角でも、男性と女性が向き合って少し楽しくお喋りできたら、それは充分『出会い』と呼び得る出来事なんじゃないだろうか。
 そのときはなんとも思えなくても、後で恋に落ちるかも知れないし、愛し合えるかも知れないし、たとえそういう未来が無くても、ただひたすらに楽しいかも知れない。
 けれど、そういうことじゃないのもなんとなくわかる。
 私は優也くんと出会えてよかったと思っているけど、亜実や真由ちゃんにはそう思われていないのだろう。
 家はわからないし、仕事はコロコロ変わるし、会う約束さえろくにできない。
 そんな男と知り合っても、彼女たちのなかでは『出会い』にカウントされないのだろう。ただ出会うだけじゃダメなのだ。
 知り合う相手はしっかり働いていて、将来を考えられて、かつ好みの男じゃなければ、いくら出会っても『出会い』とは呼ばれないのだ。
 でも、私は優也くんと出会えてよかったと思っている。
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