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恋がしたいと言いながら
第10章 嫌な女
 隣から微かに唸る声が流れてくる。
 今日も今日とてひとみちゃんの仕事が滞っている警告音だ。
 しかし私がいつものように椅子を寄せ「どうかした?」と声をかけると、彼女は焦ったように「大丈夫です」とパソコンに向き直った。
 普段の彼女ならこんな遠慮はなしに思いきり頼ってくるところなのに。ついに自立心が芽生えたのだろうか。
「じゃあ、なにかあったら聞いてね」
 そう言ったものの、どう見ても大丈夫ではなさそうなほど指が止まっているのが気になって、私のほうが集中できない。
 なんとなくそわそわした気分で仕事を進めていると、土井さんから「ちょっと」と呼ばれた。
 手には小さなトートバッグを持っている。
 促されるまま廊下に出ると、彼女は開口一番「あんまりあの子を甘やかさないで」と言った。
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