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喪服奴隷・七菜~香織の巻~
第2章 香織の看病
刺されたあの日、このまま放置されれば動くこともままならず
出血多量で死ぬんだろうと、覚悟を決めた。
ところが刺したはずの七菜が、救急車を呼んでいる。
そして俺の肩を揺さぶりながら
『死なないで!ゴメンなさい。本当にごめんなさい。
あなたの日記を見た時に、あなたを殺して自分も死のうと思ったの。
でも・・・』
そこから先の記憶はない。気がついたら病院のベッドの上にいた。

この部屋は個室で、シャワールームやトイレ、大型の壁掛けTVも完備されている。
担当の看護師がノシノシと入ってきた。
『工藤さ~~ん、お加減はいかがですかぁ?』
何を食べればこんなに太れるのか?蛇沢といい勝負だ。
中年太りの上に、いつもズボンから腹がはみ出しそうになっている。
看護師に、デリヘルのようなチェンジの制度はないのだろうか?
毎朝、目の前に看護師をズラッと一列に並べて
今日の俺の担当はこの若い看護師さんね。そんな指名制度はないものか。
どうせ入院するんなら、せめてきれいな看護師さんに脈を測ってもらいたい。
いまは顧客ファーストの時代だぞ。
そんなことを考えていると
『工藤さん、義理の妹さんがお見えですよ。
もう何回も来てるのに、いつも工藤さんが寝てるもんだから
お見舞いに来ているの、知らなかったでしょ。
着替えを用意して、お花も取り換えてくださっているのよ。
今日はちゃんとお礼してあげてね』

そういえば、ベッド横の花、常に新しいものになっていた。
病室の扉の陰から、香織が身体を小さくして様子を窺っている。
『ほら、遠慮してないで中にお入りなさいよ』
看護師に促されて、恐縮そうにベッドの横に来る香織。
看護師が出て行ってしまうと、やおら頭を深々と下げる。
『本当にごめんなさい。申し訳ありませんでした。
姉がしたこととはいえ、なんとお詫びしたらいいのか・・・』
香織が何べんも頭を下げる。
「香織君、まぁ座ったらどうだね」
省吾がベッド横の丸い椅子を勧める。
すると床に正座して、さらに頭を擦りつけるようにして謝るのだ。
姉が俺を刺したことに関して、かなり責任を感じているに違いない。
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