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『君×僕×妖怪』
第1章 ―始まり―
きっと今日帰ってくるんだ――
誰にともなく呟かれた声は何処か嬉しそうだった。
時は春先。咲き始めたばかりの桜が彼の家の庭にもあった。
膨らむ蕾は彼の期待と同じぐらい。今にも開きそうだった。
「日向(ヒナタ)様、何かいいことでも?」
縁側に座る嬉しそうな彼、日向を見てお手伝いでこの家に来ている奏(ソウ)も柔らかく微笑んだ。
奏は綺麗な黒髪と柔らかな表情が特徴的。身長は日向と同じぐらい。年齢も日向と同じぐらい。幼い頃から遊び相手としてこの家にいた奏は表情一つで日向の気分が分かる、らしい。
「ううん、何でもないよ」
縁側から伸ばした足をパタパタと動かしながら答えると奏は洗濯籠を置いて、日向の隣に座った。
「ん、何?」
はて、と言った顔をする日向を横目にふふ、と微笑み
「日向様が嬉しそうだから…いいこと、きっと起きますよ」
と奏は言った。