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『君×僕×妖怪』
第2章 ―記憶―
視界に入った人影に見覚えがあった。
青っぽい白髪。鮮やかな翡翠色の、少しつった瞳。愛想のない口元。背伸びしても追い付かない身長。何より自分と同じ狐の耳――
視線が絡むと同時に出したい声が内に潜っていく。日向に代わるようにして相手は声を発した。
「……日向?」
日向の思った通りの低い声が耳に入った。
「…あ、久しぶり…錺(カザリ)」
強ばった表情を浮かべる日向の頭上に錺の手が乗った。日向の柔らかな黄金の髪を指の間に通すと小さく笑って言った。
「身長少し伸びたか?」
「あ、当たり前だろっ……」
照れたように俯く。昔から変わらぬ身長差を馬鹿にされた気がして、何だか苛立つ。
「また、此処で会えたな」
でも、この一言をかけられると何も言えなくなる。苛立った感情も熱くなった目頭と溢れ出そうになる涙に流される。唇を噛み感情を抑える日向を見て錺は優しく抱き締めた。
「あの日と変わらず、愛してる」
囁かれた声に日向は小さく頷くことしか出来なかった。