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『君×僕×妖怪』
第2章 ―記憶―
錺が日向を抱え家に帰ったのは日暮れ前だった。
日向の上に当たる錺だが、帰るのは数百年ぶり。因みに彼等の時の流れは人間界が一日過ごすのに対して二十日ほど過ぎる。それに彼等は妖怪。寿命もうんと長い。
そうとはいえ、やはり久々の帰宅。しかもこの屋敷の主を抱えているとあれば出迎えに出た奏も驚く。
「錺様!…おかえりなさい。えと日向様は……」
目を丸くしながら訪ねる奏に錺は眉根一つ動かさずに答えた。
「泣き疲れて…倒れたのか寝たのかよく分からん。…あ、文を出し忘れたことは謝る。」
謝罪を一つ入れ、何の躊躇もなく玄関に上がる。
久々の帰りなのに、と奏は心中で苦笑した。
「日向様の部屋までお送りしますよ」
奏に導かれるがまま錺は日向を連れ、日向の自室に入った。
布団を片手と、器用なのか癖が悪いのか…足で広げると日向を寝かせた。静かな寝息を立てる子狐を見ていると笑みが溢れてきた。
「全く…いつの世も変わらないな」
何処か嬉しそうだが、寂しさを感じさせた。