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夜明けまでのセレナーデ
第8章 新たなる運命
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「私の留守をよく守ってくれたね。
ありがとう、薫。
…それから泉。本当にご苦労だった。
この屋敷が消失を免れたのは、お前のお陰だ。
…ああ、梅琳も。
どんなに空襲が怖かっただろうに…。
泉と一緒にこの屋敷をよく守ってくれた。」
重厚な家具に囲まれた居間に、礼也のバリトンが心地よく響く。
深い臙脂色の革のソファにゆったりと腰掛け、礼也は優しく皆を見渡した。
礼也は、使用人をとても大切にし、慰労する。
時には家族より優先して褒め称える。
だから、礼也は使用人たちから絶大な人気と尊敬を集めているのだ。
泉は深々と頭を下げ、梅琳は涙ぐみながら膝を折ってお辞儀をした。
「…そんな…旦那様。
私は何度も旦那様に命を守っていただきました。
ご恩返ししたかったのは、私なのです」
素朴だが理知的な瞳に涙を浮かべる梅琳に、礼也は優しく微笑む。
「ありがとう、梅琳。
…君たちは、私の誇りだよ」
薫は泉と眼を合わせて、微笑む。
…やっぱり父様は世界一の父様だ。
優しくて強くて寛大で…。
日本が戦争に負けても少しも変わらない。
…優雅で洗練された紳士の中の紳士…。
…でも、僕は…きっと永遠に父様みたいにはなれないな…。
申し訳なさに、胸がちくりと痛む。
偉大な父を頼もしく思うとともに、自分の未熟さに少しだけ引け目を感じる薫であった。
ありがとう、薫。
…それから泉。本当にご苦労だった。
この屋敷が消失を免れたのは、お前のお陰だ。
…ああ、梅琳も。
どんなに空襲が怖かっただろうに…。
泉と一緒にこの屋敷をよく守ってくれた。」
重厚な家具に囲まれた居間に、礼也のバリトンが心地よく響く。
深い臙脂色の革のソファにゆったりと腰掛け、礼也は優しく皆を見渡した。
礼也は、使用人をとても大切にし、慰労する。
時には家族より優先して褒め称える。
だから、礼也は使用人たちから絶大な人気と尊敬を集めているのだ。
泉は深々と頭を下げ、梅琳は涙ぐみながら膝を折ってお辞儀をした。
「…そんな…旦那様。
私は何度も旦那様に命を守っていただきました。
ご恩返ししたかったのは、私なのです」
素朴だが理知的な瞳に涙を浮かべる梅琳に、礼也は優しく微笑む。
「ありがとう、梅琳。
…君たちは、私の誇りだよ」
薫は泉と眼を合わせて、微笑む。
…やっぱり父様は世界一の父様だ。
優しくて強くて寛大で…。
日本が戦争に負けても少しも変わらない。
…優雅で洗練された紳士の中の紳士…。
…でも、僕は…きっと永遠に父様みたいにはなれないな…。
申し訳なさに、胸がちくりと痛む。
偉大な父を頼もしく思うとともに、自分の未熟さに少しだけ引け目を感じる薫であった。
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