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夜明けまでのセレナーデ
第1章 屋根裏部屋の約束
「…じゃあ、もう行くよ…。
きりがないからね…」
苦笑いしながら、暁人は薫の額に愛おしげにキスを落とした。
…お伽話の王子様がお姫様に与えるような慎しみ深いキスだ。

「…あの…」
「うん?」
少し躊躇して、薫は無愛想に口を開く。
「…セックス」
「へ?」
端正な貌が鳩が豆鉄砲を食ったような表情に変化する。
「セックス、しないの?」
「…か、薫…」
男らしく、上品な暁人の貌がうっすらと朱に染まる。
「まだ、したことないからさ。
…しなくていいの?」
「…薫…!」
真っ直ぐに見上げる薫を暁人は息が止まるほどに抱きしめた。
「…したいよ…。本当は…。
薫を抱きたくて堪らないよ」
「だったら…!」
もがく薫をもう一度強く抱き竦め、白い耳朶に弱々しく…しかし熱く囁く。
「…今、薫と愛し合ってしまったら、僕はきっともうどこにも行きたくなくなる。それが怖いんだ」
「…暁人…!」
暁人は穏やかな笑みを見せ、薫の頰を優しく撫でた。
「戦争が終わったら、僕は真っ直ぐに薫のところに帰る。
そうしたら、僕はもう薫を離さない。
…それまで…僕を待っていて…」
「…あきひ…と…」
名前を呼ぶ唇を、理性をかなぐり捨てた熱く激しいキスで再び塞ぐ。
…そうして…
「…浮気しないでね、薫…」
熱く…やや哀しげな眼差しで、暁人は懇願したのだ。




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