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夜明けまでのセレナーデ
第1章 屋根裏部屋の約束
「…浮気してやる…!
帰って来なかったらな…!」
…そう白い軍服の背中に叫んだ薫を振り返り、暁人は優しい眼差しで微笑った。

「…絶対に帰ってくる」
屋根裏部屋の扉は、静かに閉まった。



「カッコつけやがって…!暁人のバカ!」
泉の控えめな咳払いが聞こえた。
「…今夜の薫様はお独り言が多いですね」
静かに窘められる。
「…あ…」
…しまった。
心の声がダダ漏れしていた。
バツが悪そうにむっとする薫を、部屋の隅でカイザーを抱いていた梅琳がくすくす笑った。
その朗らかで温かな笑顔に、荒んだ心が少しだけ柔らかくほころんだ。

「…メイリン…」
「はい?」
「メイリン、怒ってない?」
梅琳は、その切れ長の聡明そうな一重の瞳を見開いた。
「なぜですか?」
「…僕の我儘で、お前もこの屋敷に留まらなくてはならなくなったから…。
本当なら軽井沢に母様たちと疎開できたのにさ…」
梅琳はすぐさま首を振った。
顎の下に切りそろえた清潔な黒髪が揺れた。
「いいえ、薫様。
私はこのお屋敷が大好きなんです。
ここは、異国人の私を初めてそのまま受け入れてくれた…もうひとつのふるさとみたいな場所です。
それから、薫様も泉さんも…カイザーも大好きです。
ここで薫様をお守りするお仕事を奥様から託されて…光栄です」
「…メイリン…。
…ありがとう…」
小さく呟く。
胸に熱いものが込み上げ、ぐっと堪える。
それを誤魔化すように素っ気なく尋ねる。
「メイリンの中国のふるさとは?
どこだっけ?」
梅琳の瞳がきらきら輝く。
「蘇州です。
水の都と言われている水路に囲まれた美しい場所ですよ。
…いつか私は故郷に帰って、旅館と茶館を経営するのが夢なんです。
美味しいお茶とお料理で旅のひとを癒すようなあったかいお店を…」
「…へえ…」

泉が優しく微笑みかけた。
「きっとできるさ。
君は努力家で賢くて本当にいい子だからね」
梅琳が照れくさそうに肩を竦めた。
そうして、熟睡しているカイザーを抱き上げながら朗らかに力強く言った。
「戦争が終わったら…平和になったら、ぜひ蘇州にいらしてください。
私がご案内します」





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