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夜明けまでのセレナーデ
第10章 僕の運命のひと
薫は大きな琥珀色の瞳を見開いた。
「…小父様…?…何を…仰って…」

大紋の大きな手が、薫のほっそりとした肩を慈しみの仕草で抱いた。
「暁人をもう待たないで欲しい。
…暁人は…恐らくもう私たちのもとに帰ることはないだろう。
暁人の乗っていた軍艦は、硫黄島の沖合いで敵機に激しく攻撃された。
…認めたくはないが、そのまま沈没してしまったに違いない。
私の友人の軍関係者からの話を総合すると、どうしてもその結論に辿り着いてしまうのだ。
今でも信じられないし、信じたくはない。
…けれど…もう終戦から一年が経つのだ。
私たちは、この事実に向き合わなくてはならないのだよ」
「小父様…!」

薫の肩に、思わぬ力が込められる。
「薫くん。…君には君の人生がある。
帰らぬ暁人をいつまでも待たなくていいんだ。
君は君の人生を…」
「やめてください!」
薫は反射的に叫び、大紋の身体を突き飛ばした。
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