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夜明けまでのセレナーデ
第10章 僕の運命のひと
「…父様…」
薫のため息に菫の歓声が重なった。
「お父様!大好き!」
菫はぴょんと椅子から降りると礼也に駆け寄り抱きついた。
そんな菫を礼也は逞しい腕を広げ、愛おしげに抱きしめた。
「可愛い菫。お前の願いはなんでも叶えてあげよう。
…だから、お父様にキスをしておくれ」
「もちろんだわ!大好きなお父様」
菫は可愛らしい唇で礼也の頰に啄ばむようなキスをした。
…二年ほど菫と離れ離れだった礼也は、こうして一緒に暮らせるようになったことが嬉しくて仕方ないらしい。
少し冷めた眼差しをする薫に、悪びれない笑顔を送りながら、礼也は肩を竦めて見せた。

「…菫にとっては我が家で迎える久々の華やかなクリスマスだ。
許してやってくれ」

薫は苦笑しながら、頷いた。

「…父様がそう仰るなら…」

光が陽気に手を叩いた。
「決まりね!
そうとなったら急いでお客様にご招待状をお送りしなくては。
…大紋様ご夫妻もお招きいたしましょう。
最近、絢子様はだいぶお元気になられたそうだから、良い気分転換になられるのではないかしら」

…忙しくなるわ。
と、うきうきと珈琲のおかわりを飲み干した。

薫はやや冷ややかな表情でナプキンを卓の上に置き、立ち上がった。

「…それでは僕はお先に失礼いたします。
今日は成績会議があるので早く出ますから…」
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