この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夜明けまでのセレナーデ
第3章 Tango Noir 〜禁じられたお伽話〜
…その森番の住む小屋はいつも薄暗かった。
四方を鬱蒼とした樫の大木に囲まれているからだ。
だから小屋の中には昼でも、太陽の光が殆ど届かなかった。


…こんなに情事に適した場所はないな…。
昼から男と色ごとに耽ってもなけなしの罪悪感を覚えずに済む…。
紳一郎は気怠く、逞しい男の胸板に貌を擦り寄せながら小さく笑った。
それを合図に…とでも言うように、屋敷の森番…十市は大きな手で紳一郎の髪をゆるりと撫ぜた。
「…十市…」
子どもが母親に甘えるように、そのまま男の逞しい胸に貌を埋める。
…男からはいつも、薄荷のような森の木々の香りと、さまざまな革の匂い…そして安煙草…それから清潔な石鹸の匂いが微かにした。

「…坊ちゃん…。痛くなかったか?
俺はあんたとすると、いつも加減ができなくなるから…」
訥々とした誠実な喋り方が愛おしい。
首を振りながら、男の貌を見上げる。
「…大丈夫だよ。
…だって…僕の身体はもう、十市の形になっているから…」
潤んだ眼差しで瞬きすると、十市は苦しそうにその美しい蒼い眼を眇めた。
「…坊ちゃん…!」
十市の瞳は普段は蒼色だが、光に透けると紫色に変化する。
…さながら高貴な宝石・アレキサンドライトのようだ…。
その瞳が近づいたかと思うと、紳一郎の唇が狂おし気に奪われた。
「…んんっ…あ…は…ああ…」
紳一郎の形の良い薄い唇は、男のややひび割れた厚い唇に蹂躙され、再び熱を持った…。



…狂おしく激しい口づけを名残り惜しそうに終えると、十市は紳一郎をじっと見つめた。
「…坊ちゃん、俺がこれから話すことをよく聞いてくれ」
「…何?十市…」
身も心も満たされ天国のような幸福感の中、紳一郎は聞き返す。

「俺はもうすぐ出征する」
「…言わないでよ…」
…一気に哀しみと不安が胸に押し寄せる。
「…忘れていたのに…」
貌を背ける紳一郎の白い顎が捕らえられる。
十市の雄々しくもやや野蛮な彫りの深い貌が目の前に迫る。
「聞いてくれ。あんたのためになることだ。
…俺は決めたんだ」
「…何を…?」

訝し気に美しい眉を寄せる紳一郎の視野の片隅に、ゆっくりと小屋の扉が開くのが見えた。

「…無粋な闖入者にはなりたくないものだな」
紳一郎は瞳を凍らせた。
「青山さん⁈」
「まだ史朗と呼んでくれないのかね?紳一郎くん」
青山は、優雅な足取りで二人の寝台に近づいてきた。
/322ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ