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戦場に響く鈴の音
第6章 覚悟
今更、義父や直愛に譲れるかよ。
改めて鈴を俺の小姓として育てようと思う。
仔猫程度の重さと温もりが心地良く、鈴を抱えて眠った。
だが俺は朝が嫌いだ。
「起きろ。神路…。」
既に小姓の服に着替えた鈴が俺の上で飛び跳ねる。
「お前、もう少し丁寧に起こせっ!」
「神路は朝になっても簡単には起きない。そう神路のおっ父が言っていた。」
義父は何故、そんな事を鈴に話してるのだ?
今は義父を恨みたい。
「だからな。これからは鈴が神路をちゃんと起こしてやる。鈴は神路の小姓なのだからな。」
キッパリと鈴が言う。
その顔は自信を持った顔をしてる。
「俺の小姓で良いのか?」
俺の方が自信がない。
「当たり前だ。神路の食事を持って来る。」
「鈴の分もだ。」
「わかった。」
ほんの少しだけ…。
鈴が嬉しそうな表情を見せた気がする。
その顔はすぐに背を向けた為に俺には確認が出来ない。
俺に構って欲しかった鈴は俺の傍に居る為に必要な、やるべき事を見つけたらしい。
鈴には生きる目的があるとわかっただけでも安堵する。
安堵はしたが…。
「お前、やっぱり主の俺を舐めとるだろ?」
鈴にそう言ってやる。
「何故だ?」
鈴は無表情なまま答える。
あれから鈴は相変わらず厠を背負い、俺の馬に乗る。
しかも、夕飯は芋の煮付けを俺の分まで鈴が食う。
今回も雪南が選んだ庖丁人を連れて来てる。
蒲江の庖丁人は料理が美味い。
黒炎でも珍しい客には蒲江の庖丁人が特別に使われる。
庖丁人は食料を積んだ荷車に乗せて運ぶ。
彼らは一晩中、料理をする為に行軍で兵と同じように歩かせる訳にはいかない。