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戦場に響く鈴の音
第6章 覚悟
2万という大量の兵の食事を僅か30人で作る。
朝は粥と漬物を…。
昼間は歩きながらでも食べられる握り飯を…。
夜だけはしっかりとした膳を用意する。
その蒲江の料理の中で芋の煮付けが鈴のお気に入りらしい。
「小姓が主の飯を奪うな。はしたない…。」
あれから鈴はしっかりと飯を食い、しっかりと寝てくれる。
「鈴は成長するから神路よりもいっぱい食べなければならないと神路のおっ父が言ってた。」
「だったら庖丁人からお代わりを貰って来い。」
「神路は好き嫌いが多いから、残すと勿体ない。」
「芋は俺も食えるんだよ。」
「神路はもっと葉っぱを食べろ。」
何故、俺は小姓に命令されてるのだ?
「酒が無いから食欲が湧かないだけだ。」
「神路はお酒ばかり飲むから良くないとおっ父が言ってた。」
二言目には義父の言葉だと鈴が言う。
このままでは雪南2号が育つのではないかと不安になる。
「神路、読んでくれ…。」
鈴が俺と寝る床に本を持ち込む。
今回は鈴用の床もあるが俺の床に鈴は潜り込む。
「読んで下さいだ。」
「神路、早く…。」
義父から貰った本を読めと鈴が強請る。
3冊しか持って来てないから3日置きに同じ本を読むローテーションにうんざりする。
それでも鈴は寝るまで本を読ませる。
少しづつ、文字を覚えてるらしい。
俺が本を読めば鈴は小さな指で文字をなぞる。
「鈴、いい加減に飽きないか?」
他の本を買ってやろうかと鈴に声を掛ければ、本を読めと強請った仔猫は無邪気な顔で眠ってる。
「…んとに、人の話を聞かねえな。」
文句を垂れたところで可愛く寝る鈴に俺の方が今は逆らえない立場である。
ちゃんと食事を取り、勉強して、よく眠るなら主としては文句の付け所が無い立派な小姓だ。