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戦場に響く鈴の音
第6章 覚悟
「慣れたなら良いか…。」
俺の自己満足で鈴の頬に口付けをして寝る。
やっぱり、こいつって寝顔が可愛い過ぎる。
親馬鹿丸出しでそう思う。
西元まで後半日の距離という所まで差し掛かった頃、直愛が俺に馬を並べて笑顔を見せる。
「最近の鈴殿はしっかりとして来ましたな。」
鈴が褒められたのに俺の方が嬉しくなる。
「そだろ?こいつ、もう文字を全部読めるようになったぞ。」
「文字をですか?」
「まだ仮名文字だけだけどな。」
「それでも充分と立派な事です。」
俺と直愛がそんな話をしてても鈴は相変わらず無表情でマイペースなままだ。
「お前ね、せっかく直愛が褒めてくれてるのだから少しは愛想良くしろよ。」
鈴の笑う顔が見たいだけの俺は鈴の頭を撫でてそう言う。
「もうすぐ、西元だ。余計な話とかしてられない。」
鈴が悲しげに呟く。
西元は鈴にとって辛い場所だからか?
戦場となる西元で浮かれてる場合じゃないと鈴に言われるとは思ってもみなかった。
「黒崎様っ!伝令の者がっ!」
俺達が向かう方からそう聞こえて来る。
「西元からの伝令か?」
「そうです。我が軍は現在、西元跡にて本陣を敷き、川沿いに簡易防壁を設けて笹川の侵攻に対応しております。」
やはり黒崎の兵は由からの侵攻に対して、しっかりと守りの体制を整えながら俺達の到着を待ってる。
御館様も義父も民を信じろと俺に教えてくれた。
その言葉に間違いはない。
俺の期待通りに兵達が働いてくれてる。
「直愛、悪いが後を頼む。騎馬だけ率いて先に行く。」
徒歩だと半日の距離だが騎馬なら6つ刻もあれば着く。
連れて来た騎馬は7000。
それだけの兵でも駆け付ければ西元の兵の指揮が上がる。