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戦場に響く鈴の音
第6章 覚悟
鈴から離れ、深呼吸をすれば空気を読まない直愛が息を切らし俺の天幕に現れる。
「神路殿っ!笹川が動き出しておりますっ!」
直愛が叫び、鈴が身体を小さくする。
「落ち着け、直愛。鈴が怯える。」
「しかし…。」
「笹川の動きとは?」
「およそ500の騎馬で天音川を渡っております。」
「俺も出る。馬の用意を…。」
天幕を出ようとする俺の甲冑を鈴が掴む。
「大丈夫だ。多分、様子を見る為の陽動だ。」
「鈴も…。」
「わかった。一緒に来い。」
俺の行動に直愛が目を開く。
「鈴殿は…。」
「構わん。戦闘にはならんと思う。」
鈴を俺の馬の前に乗せて俺は守備が敷かれた簡易防壁の方へと馬を走らせる。
楔にした丸太を斜め格子に組んだだけの防壁だが、騎馬500程度では破れる物でもない。
防壁のこちら側では笹川の騎馬に対して槍を構え、その後ろには矢を構える守りの兵が居る。
防壁の向こう側に川岸があり、笹川の軍勢は丁度、天音川を渡りその川岸に辿り着いた瞬間だった。
「直愛、見えるか?」
「何ですか?あの馬は…。」
直愛が驚くのも無理はない。
笹川の騎馬の馬は普通の馬の脚の倍の太さがあり、大きさや高さも有り得ないほどに大きい。
「あれは農耕馬だな。普段は田や畑を耕したり馬車などを引く為の馬だ。」
身体が大きな馬だからこそ簡単に天音川を渡れる。
その分、小回りが効かず速さが無いので戦場で使うには向かない。
「天音川を渡る為だけの馬ですか?」
「だから500しか数が無いのだろ。」
笹川の動向を冷静に分析する。
相手がどんな人間かがわかれば、この先の展開もそれなりに見えて来る。