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幻の果てに……
第2章 思案
今晩、夫は私を求めてくるだろう。
不思議な感覚に陥った。
夫とのセックスは、子作りのために避妊をしていない。彼も、子供を待ち望んでいるから。
それは、夫婦として当たり前だろう。
私も風呂を使いベッドへ入ると、夫が乳房を揉んでくる。
「ごめん……。今、生理中だから……」
何故か、そんな嘘をついてしまった。
生理は先週終わっている。
自分でも、そんなことを口にした意味が分からない。
「何だよー。せっかく会えたのに」
夫が、溜息混じりに抱きしめてきた。
掴まれた手を、もう勃起している性器へ当てられる。
単身赴任中に、浮気はしていないのだろうか。
問題を起こさなければ、構わないと思ってしまった。
「梨央……」
仰向けになった夫が、下半身だけを全て脱ぐ。直接性器に手を持っていかれ、塊を掴んだ。
大学時代の恋人について話してはいないが、初めてセックスした時に処女じゃなかったから、夫も分かっていたはず。
元々私は、夫以外の男性を知っている。
ここ一ヶ月ほどで、その人数が増えただけ。そう考えた。
塊を扱き始めると、溜息が聞こえてくる。
「梨央……」
私の手の中で、硬さを増す塊。
いつもなら、それが欲しいと思ったのに。何故か今晩は、そんな気になれなかった。
後悔なのだろうか。
それとも、後ろめたさ。
今挿入されれば、以前夫に見せていたのと違う自分になってしまうかもしれない。
乱れていやらしい言葉を口にし、求めるように腰を動かす。
そんなことをすれば、怪しまれてしまう。
「梨央っ……。はあっ……」
夫は、枕元にあったティッシュで放出を受け止めていた。
溜息を隠す。
いつもなら、夫が帰宅した時私も欲しかったはずなのに。
それは、長く離れている夫婦なら自然なことだろう。それなのに、嘘をついて拒否してしまった。
私も、子供が欲しいはずなのに。
近所の年配の主婦には、「長年セックスレスよ」と笑っている人もいた。そんな人に限って、「子供はまだ?」と訊いてくる。
そんな時はつらい。
主人が数ヶ月に一度しか戻らないと、何となくごまかしていた。