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幻の果てに……
第2章 思案
「梨央……」
パジャマを着て、ケットをかけた夫が抱きしめてくる。
結婚してから夫とキスをしたのは、どれくらい前だろうか。
セックスは乳房の愛撫から始まるが、それも段々と雑になってきたような気がする。
夫を愛しているかと訊かれれば、はいと答えるだろう。
友達の中には、まだ結婚していない子もいる。恋人はいても、いざ結婚となると迷うそうだ。
夫は優しくて、ある程度の経済力もある。友達の紹介で知り合い付き合うようになって、プロポーズされたから結婚した。
それは普通だと思う。
プロポーズを断る理由がなかったから。
温もりを感じていると、何を考えたらいいのか分からなくなっていく。
私はこの人の妻。
結婚というのは、永遠の約束。
そう思いながら、眠りについた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「三ヶ月後には、また戻れるから。そろそろ、子供も、欲しいしね」
そう言ってから、夫は空港行きのタクシーへ乗る。
今回も家にいられたのは三日間。
いつもそんな感じだから、気にはならなかった。
また、三ヶ月間の孤独。広い家が、余計に広く感じた。
三階へ上がり、廊下の突き当りの納戸から掃除機を出す。それを持ち、三階の部屋へ。
目隠し用のカーテン以外、まだ何もない部屋。
三階の二部屋は子供部屋の広さに造ったが、五年間使われることもないまま。
掃除だけはしているが、この部屋が使われることはあるのだろうか。そんな風に考えてしまう。
一人で部屋を使うのは、小学生くらいからだろうか。子供のいない私には分からないが、まだ目途さえ立っていない。
二部屋の掃除を終えると、軽い夕食を一人で食べる。
夫がいなくなったせいか、妙に人恋しくなってしまう。
自分から嘘をついて、セックスを拒否したのに。
夜を待って繁華街へ向かうと、あの店の扉を開けた。