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幻の果てに……
第2章 思案

嫌。
イきたくない。
ずっとこのままでいたい。
そう願っても、どんなセックスにも終わりはきてしまう。
「はぁっ、ヤっ、ヤぁっ、んんっ、あっ、イくぅっ! あぁっ……」
「梨央さんっ。はあっ……」
ポタポタと顔に何かかかった。
精液。
彼は私を見ながら、自身を擦っていたらしい。
「はぁっ……。んんっ……」
恭介の指先が頬に触れ、精液を口へと運ばれる。応えるように舌で舐め、飲み込んでいった。
私は、こんなセックスがしたかったのかもしれない。
淫らになりたかった。
本当の自分を、曝け出したかった。
回数への不満じゃなくて、こんなセックスがしたかった。
でも、自分から夫へは言い出せない。
それが一番のストレス。
「梨央さん? シャワー浴びてくる?」
「うん……」
髪にも、精液が飛び散っている。
シャワーを浴びながら浴槽のお湯も張り、少しだけ浸かってからベッドへ戻った。
そしてまたセックス。
今度はバックからで、彼に合わせて腰を動かした。
疲れ切って眠り、時間になってラブホテルを出る。
また一つ、幻が終わった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
近くのファミレスに入り、電話をする。
『梨央、何?』
「昨夜、静香の家に泊ったことにして?」
理由を話したら、静香は驚いていた。
まさか私が一人であの店へ行くなんて、思ってもいなかったんだろう。
親友にさえ、私は貞淑な妻だと思われている。だから最初に連れて行かれたあの日だけ、たまにはハメを外せばいいという意味だったはず。
裏工作を頼んでも、静香だって嫌とは言えない。
逆に、静香が私を使う分には構わないし。
夫はいつも、数ヶ月は留守。その間なら、多少日にちのズレがあっても問題はない。「いつだったけ?」と忘れた振りをすればいいだけ。
ファミレスを出てから店で大きめのバッグと服を買った。下着も。
駅から歩いて家の近くまで来ると、近所では密かに“世話焼きオバサン”と呼ばれている人に会った。
「あら。小坂さん。いまお帰り? ご主人、単身赴任なんでしょ?」
思った通りの言葉。
「はい。だから淋しくて、友達の家に泊ったんです」

