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幻の果てに……
第3章  悦楽


 ここでは、顔も体格も関係ない。
 お互いにそう言っていたが、今日は二人とも当たりかもしれない。
 イケメンというより、タイプかタイプじゃないか。
 大学時代からの付き合いだから、静香の好みも分かっている。
「浩太(こうた)です。名前訊いてもいい?」
「梨央です。あの……。今日は、友達と一緒なんだけど……」
「え?」
 浩太が戸惑うのも当然だろう。
 店に入る前に静香から耳打ちされたのは、「今日は一緒にしようよ」だった。
 つまり4P。
 不安もあったが、興味もあった。
 でも私と静香は友達だが、ここで会う男達同士は初対面。それを了承するか分からない。
「友達と一緒に、って意味?」
「ここで会った、相手の男性も……」
「へえー。面白そうだね。やったことないけど」
 浩太は意外とノリ気に見える。
「隣の子なんだけど……」
 浩太は、静香と挨拶を始めた。
 お互いも気に入ったらしい。静香の相手も私に微笑みかけてくる。
 静香の隣に座った男も混ぜ、取り敢えず呑みに行くことになった。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 四人で、近くの居酒屋の個室へ入る。
「どうも。和斗(かずと)です。36歳。よろしくー」
「浩太です。34だから、近いね」
 それぞれに名前と年齢を語ってから乾杯した。
 私は勿論、本名の梨央と名乗った。年齢も32歳と本当。
 相手は偽名でも構わないが、自分は本名で呼ばれたい。何故かそれが拘りだった。
 静香も私の手前か本名を言い、当たり障りない会話が続く。
 その間に、和斗はホテルのパーティールームを泊まりで取っておいた。
 あの店でもらうチケットは2枚ある。差額は男性2人が出し、ここの呑み代は私達が払うという約束。
 ある程度割り勘的にしないと、買った買われたことになってしまう。
 私は強くないのに、早いペースで何杯も呑んだ。
 緊張を、少しでも和らげたくて。
 一緒に呑んだことで四人は昔からの友達のように打ち解けられ、ラブホテルへと向かった。



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