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幻の果てに……
第5章  初体験


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 夫が戻る日までに、何度あの店へ行っただろう。
 最初の頃は数えていたが、もう今は覚えてもいない。
 分かったのは、人によって色々と微妙に違うこと。
 セックスの仕方は勿論。性器の長さや太さ、形まで。
 性器については“ここ”が、というほどではないが、当たり方の違いがあった。
「梨央……」
 風呂から戻った夫が、ベッドに入ってくる。
 夫が浮気していないとしたら、半年もセックスをしていない。三ヶ月前に戻った時は、生理だと嘘をついて拒んだから。
 でも、さすがに今回は無理だろう。三ヶ月に一度の偶然も無いとは言えないが、私自身の態度に出てしまいそうだった。
 自分が他の男性に抱かれていると、夫のことも疑ってしまう。
 私の浅はかな知識では、海外の方が女性を買いやすいと聞く。そんなドラマも多く、鵜呑みではないがある程度は信じてしまう。
 実際に自分がそれに似たことをしているせいで。
 「梨央?」
 ケットをめくった夫が、すぐに乳房さを揉んでくる。
 最初はキスが欲しい。
 そこで愛情を確かめ合い、その後の行為を深めていく。そして丁寧な愛撫。
 気持ちを高めてからなのは、やはり夫婦じゃない間の方が萌えるからだと思った。
 今日夫が求めてくるだろうとは思っていたが、あの店で会う男性達とは違う。
 緊張感もなければ、期待もない。
 夫婦でのセックス。とくに私達は子作りのため。快感を味わうというよりは、中で精子を出すのが目的。
 そう考えると、空しさだけだった。
 パジャマの前ボタンを外され、ブラジャーを着けていない乳房を揉まれる。
 不思議と、何も感じなかった。体を触られている。そんな感覚だけ。
 内心では焦りもあった。
 もう夫では感じない。
 以前は夫で充分だったのに。
 他の男性を知ってしまった私の体は、もう満足出来ない。
 もっと激しく煽って欲しい。高まるような台詞を投げかけて欲しい。
 でも、感じていないと変に思われる。そう思い、自分なりに喘ぐ。
「あんっ」
 気持ちのこもっていない喘ぎでは、夫にバレるかもしれない。



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