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幻の果てに……
第1章 誘惑
「あっ、もうっ、んんっ、イクぅっ! はぁっ……」
全身が震え、一度力が入る。
でもすぐに弛緩して、腰に回していた腕がシーツに落ちた。
「んっ……」
真っ白になった頭の中で、和彦もイったのを感じる。
「梨央……。悦かったよ……」
彼が添い寝してきた。
腕を回され、その温もりに溜息を漏らす。
夫以外と、セックスをしてしまった。
それも、無理矢理じゃない。私も同意して付いて来た結果。
ぼんやりと、あの店のことを考えていた。
安くはない入場料を払い、一晩だけの相手を見つける。
店は、出会いの場所を提供しただけ。売春とは違うから、違法営業じゃないだろう。
私が、勝手にセックスを選んだだけ。
「梨央……。また会ってくれる?」
答えられなかった。
これは、浮気なんだろうか。不倫なんだろうか。
でも、どちらでも同じ。
夫以外とのセックスに溺れたことに、間違いはないから。
何も言わないままでいると、和彦は首すじにキスをしてからバスルームへ行ってしまった。
鏡張りの天井を見ると、全裸の自分が写っている。
セックスの後の気怠さを残した、少し色っぽい表情。
夫はろくな愛撫もせず、甘い言葉もなく、急ぐように挿入するだけ。
結婚というのは、どういう意味なんだろう。
家庭を持つということは分かっている。
でも夫は何ヶ月も家へ戻らず、私は自分自身で慰めるだけ。
勿論、夫が仕事だとも分かっている。
それでも放って置かれた体は、こんなことを求めていたのかもしれない。
避妊をしてセックスをすれば、夫には分からないはず。
「梨央。大丈夫? シャワー浴びる?」
腰にタオルを巻いて出てきた和彦に言われ、頷いてからバスルームへ行った。
まだ気怠い体に、シャワーが心地好い。
今日のことを知っているのは、静香と和彦だけ。二人にも家庭があるから、秘密を漏らしたりはしないはず。
そう考えながら、シャワーの中で目を閉じた。