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幻の果てに……
第6章  衝撃


 私なら、三ヶ月も夫は不在。生活費を一度に下ろして、浪費してしまったと謝れば遣り過ごせる。
 この服を買ってしまったと言って、クロゼットにある適当な服を見せればいい。
 それに、私自身のことが知られるのも怖かった。
 静香が堕胎したことが、静香の夫に知られたら。
 彼女は言わないだろうが、泊まりに来るような仲。最低、疑われても仕方ない。
 事実だから。
 あの店で会った誰かが言っていた、『自分の家庭を壊す気はない』。それは私だって同じ。
 今の生活があるからこそ。
 現実があるからこそ、幻を楽しめる。
 すぐにスマホで調べ、病院の予約も明日取れた。
 銀行へ行って静香に希望の金額を渡し、家へ帰ることにする。
 静香は何度も謝っていたが、私は避妊薬の話をしておいた。
 知らなかったようで、無理な笑顔の彼女が頭に残ったまま。
 手術をすることで、一つの命を葬る。
 それは、私もつらかった。
 夫にさえ知られなければ、あの店へ行くのは悪いことじゃない。
 自分をそう思い込ませようとした。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 暫くは家で大人しくしていたが、やはり幻を見たくなる。
 幻には、それくらいの魅力があった。
 セックスそのものの快感よりも、愛されるということに。
 夫から、愛情を感じないわけじゃない。
 それでも、何かが違う。
 一時の愛情だから、燃えられる。
 終われば、全て幻。
 相手だって、きっとそのはず。
 家庭は平穏を守り、幻に溺れる。
 静香の件があったのに、私はまたあの店へ向かった。
 女の方が、条件が悪いのは分かっている。それは分かっていても、もう自分を止められない。
 声をかけてきたのは、潤(じゅん)という30歳の男性。
 結婚していて、家庭を壊したくないと言っていた。
 でももし私が妊娠しても、彼がどこの誰だか分からない。それはリスク。
 背徳感というのは、リスクを伴うからかもしれない。
 店で少し話し、潤とラブホテルへと向かった。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「んんっ……」
 愛撫だけでも、快感に襲われる。



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