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幻の果てに……
第1章 誘惑
「おいくつですか? 私は32です……」
「へえー。もっと若く見えるね。オレ、26」
6つも年下。
それに人妻が好きだなんて、変わっていると思った。
「カノジョはいるけどさー。奥さんに比べたら、ブサイクだよー」
翔の方を見ていると、少し離れて座っていた女性が男性と席を立つ。
こんなチャライ子とは思ったが、今まで周りにいなかったタイプ。
ずっと付き合うわけじゃない。
「取り敢えず、席、移んない?」
「はい……」
翔が私のグラスも持ち、テーブル席へ移った。
「人妻って、そそられるんだよねー。ダンナとヤりまくってるのに、まだ足りないってことじゃん? ここに来たのは」
「夫は、単身赴任だから……」
「へえ。じゃあ、飢えてるんだー。オレが満たしてあげるよ」
小声で言った翔が、笑っている。
飢えている。
そうかもしれない。
一週間前に知らない男とセックスしたのに、またここへ来てしまうなんて。
相手なんて誰でもいいから、自分を解放したい。
でも、迷っていた。
誰でもいいといっても、今日の相手は家庭を持っていない。彼女なんて、知られても簡単に別れられる。
「連絡先とかも訊かないしさあ。奥さんだって、ヤりたいんだろ?」
“奥さん”と呼ばれることも、何故か刺激的だった。
「ん……。出ようか……」
笑顔で言うと、彼はすぐに立ち上がる。
店を出て、そのままラブホテルへと向かった。