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狼に囚われた姫君の閨房録
第25章 一との別離
私はその場を離れた。
(一兄上さまが新選組から離脱する……いなくなってしまう……会えなくなる)
頭のなかは真っ白だった。
歩き続けるうちに、総司のいる庵まで来てしまった。
「……何か、用?」
縁側からそっけない声が飛んできた。柱にもたれて、総司が日光浴をしていた。
「来るなって言ったよね?」
西本願寺に移転後、総司の病状は重くなる一方だった。歳三の厳命もあり、見舞いは控えていたのだが。
総司の痩せ細った姿を見た瞬間、ほおを一筋の涙が伝った。
「何……何かあったの?」
「一兄上さまが……」
それ以上は言えなかった。胸が苦しくて、言葉が出ない。
「新選組を脱退するって話?」
総司の言葉に、私は弾かれたように顔を上げた。
「こう見えても、隊のことはお見通しだよ。この間も、平助が来たからピンと来た」
「平助兄上さまが?」
「見舞いに来たとか言ってたけどね。まっすぐなやつだから、丸わかりだったよ。脱隊を決めた一くんに付き合うんじゃないかな?」
「やはり……一兄上さまは心をお決めに……」
「あの参謀のことだからね。二人を丸め込んだ上での、離脱宣言だと思うよ。だよね?一くん」
総司の言葉と同時に、襖が開けられた。
出てきたのは、一だった。一は私を見下すと、言い放った。
「話したいことがある。少し、付き合え」
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