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狼に囚われた姫君の閨房録
第25章 一との別離
柔らかな陽の射す茶店。
甘酒と緑茶を注文すると、一は私と緋毛氈の縁台に座った。
「すみれ」
一の視線の先には山の稜線があった。春めいた峰を見据えたまま、一は呟いた。
「俺は伊東参謀と行動を共にすることになった」
「……存じております」
「そなたと寛ぐのも、残りわずかになろう」
「……」
「達者で暮らせ」
そう言うと、一は沈黙した。
湿り気を帯びた風が私と一の間を通り抜ける。甘酒と緑茶が運ばれてきた。
「もう会えないのですか?」
甘酒を一口飲み、私は尋ねた。
「新選組とは袂をわかつ。お前とも、これっきりになる」
「兄上さま……」
「兄とは呼ぶな。俺はもうお前の義兄ではない」
「では、一さま」
どこまでも静謐な横顔に、私は胸を締め付けられた。声を絞り出す。
「せめてもの、名残りに今宵……」
一夜を共にしてほしい、と言いかけたが、
「念のため、言っておく」
一はそれを遮った。
「俺はお前を愛してはいない。今までのも、伽をさせただけだ。それでも、かまわんか?」
「構い……ません」
私は誰のものでもない。歳三のものであり、左之助のものであり、総司のものであり、容保さまのものでもある。
だから、一のものでもあるのだ。夜伽でもかまわない。愛されるのならば。
緑茶を飲み干すと、一は小銭を置いて立ち上がった。
「今夜は三番組の見回り当番だ。帰営は夜半になるが、俺の寝所に行っていろ」
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