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狼に囚われた姫君の閨房録
第26章 一との逢瀬
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表通りに並ぶ屋台には、人だかりができていた。送り火を見ながら、軽く食べるのだろう。
おそばの屋台に、団子の屋台。お寿司の屋台もあった。
私はお団子の屋台を覗いた。
「へい、らっしゃい!」
鉢巻をしめたいなせな男の人が私を迎えた。
あん団子や蓬団子、三色団子が並んでいる。炭火の上では、蓬団子が焼かれていた。
「なんにする?ちょうど、よもぎが焼けたけど、持っていくかい?」
「じゃ、それを」
焼き立ての蓬団子を皿に乗せると、男性は番茶をつけた。
「お茶はおまけだ。嬢ちゃん、美人だからよ」
「ありがとうございます」
私は代金を支払うと、団子の皿と湯呑みを手に、屋台を出た。
と同時に、群衆から歓声が上がった。私は反射的に大文字山を見た。
『大』の字の点火が始まった。
広場に大勢の人が集まっている。縁台がいくつも出ていた。
私も、その一つに座った。
炎が少しずつ山の斜面に『大』の字を書いていく。薄闇の中で、その明るさだけが際立つ。
なんて、厳粛な光景なんだろう?
(綺麗……)
団子の串を持ったまま、私はうっとりとした。
五山の送り火を見物するのは初めてだ。こんなにのんびりとするのも、久しぶりである。
(一兄上様……どうなさってるかな?)
一も、どこかで、この送り火を眺めてるかもしれない。そう思った時、
「ひゃっ」
私はいきなり背後から抱きしめられた。
おそばの屋台に、団子の屋台。お寿司の屋台もあった。
私はお団子の屋台を覗いた。
「へい、らっしゃい!」
鉢巻をしめたいなせな男の人が私を迎えた。
あん団子や蓬団子、三色団子が並んでいる。炭火の上では、蓬団子が焼かれていた。
「なんにする?ちょうど、よもぎが焼けたけど、持っていくかい?」
「じゃ、それを」
焼き立ての蓬団子を皿に乗せると、男性は番茶をつけた。
「お茶はおまけだ。嬢ちゃん、美人だからよ」
「ありがとうございます」
私は代金を支払うと、団子の皿と湯呑みを手に、屋台を出た。
と同時に、群衆から歓声が上がった。私は反射的に大文字山を見た。
『大』の字の点火が始まった。
広場に大勢の人が集まっている。縁台がいくつも出ていた。
私も、その一つに座った。
炎が少しずつ山の斜面に『大』の字を書いていく。薄闇の中で、その明るさだけが際立つ。
なんて、厳粛な光景なんだろう?
(綺麗……)
団子の串を持ったまま、私はうっとりとした。
五山の送り火を見物するのは初めてだ。こんなにのんびりとするのも、久しぶりである。
(一兄上様……どうなさってるかな?)
一も、どこかで、この送り火を眺めてるかもしれない。そう思った時、
「ひゃっ」
私はいきなり背後から抱きしめられた。
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