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狼に囚われた姫君の閨房録
第26章 一との逢瀬
「何者っ?」
私は胸元に手をかけたが、着替えた時に懐剣は置いてきてしまった。
(不覚……!)
私は胴に回っているその者の手首を掴んだ。捻ろうとした時、
「……俺だ」
耳元で、低い声がした。
「じっとしてろ」
抑揚のない声。静かだが、強い口調。間違うものか。
「一兄上……さま」
「息災だったか?」
「はい……兄上様は?」
「変わりない。平助も、元気にやっている」
今にも泣きそうな私の首を自分にねじ向けると、一は口付けた。
「ん……」
何ヶ月ぶりかの口づけ。熱く、とろけるように甘い。
甘ったるさに浸りつつ、私には疑問があった。
一はどうして、この場に現れたのだ?伊東派が住む高台寺からは距離があった。
「なぜ……かような場所に……」
そこで、私は浴衣の上から乳房を鷲掴みにされた。
こんなところで?暗闇とはいえ、周りに人がいるのに。
「みな、大文字焼きに気を取られている。見るものはない。案ずるな」
一は耳元で囁くと、浴衣越しに乳首を摘んできた。
布一枚隔てた愛撫はもどかしく、もっと激しく愛してほしいとさえ願ってしまう。
その心を読んだのだろう。
一の手が襟をはだけ、乳首を捻り上げた。両方の指先でくりくりとする。
「ううんっ」
私の背中が反った。
背後から乳房を思う様弄ばれ、私は声を抑えられない。
「……くっ……ふぅ」
下半身も反応し始めた。
愛の泉の果実が膨らむ。果汁が溢れて滴った。
浴衣の裾がぐっしょりと濡れるのがわかった。
(どうしよう?せっかく、左之助兄上様に用意していただいたのに)
私が足をもじもじさせていると、足元で裾を広げる者があった。
真っ暗闇で顔はわからない。わからないけど、その者は私の足の間に顔を埋めて言った。
「びしょ濡れじゃねえか。そんなに、一に愛されたかったのか?」
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