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狼に囚われた姫君の閨房録
第27章 下手人は原田?
よく眠れぬままに、私は朝を迎えた。黄八丈に着替え、井戸に向かう。
ちょうど、左之助が裏の木戸から出ようとしていたので、
「兄上さま、いずれに参られまするっ」
思わず、私は叫んでしまった。
左之助は驚いたように、こちらを見た。私を認めると、普段通りの笑顔を向ける。
「よう、すみれ。いい朝だな」
「どちらにいらっしゃるのですか?」
「奉行所だよ。来いって言われたからな」
「やっぱり、おいでになるのですか?冤罪なのに……」
命が下ってもいないのに、左之助が暗殺などするはずはない。
「だから、行くんだよ。きっぱり俺じゃねえって言ってくる」
「せめて……お供を」
「一人でいい」
「……でも」
「そんな顔すんな。俺がもう戻ってこないみてえじゃねえか」
左之助は私の頭を抱いた。しばらく抱擁した後、額に軽く口付ける。
「心配しなくていい。無実なんだから、何もされやしねえ」
「ええ」
「後で、総司の様子をみてやってくれ。昨夜、兄貴との話を立ち聞きしてたらしくてな。余計な心配は体に触るからよ」
木戸を出て伏見奉行所に向かう左之助を、私はいつまでも見送っていた。
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